「成功の反対は、経験」。 失敗の経験があるからこそ、成功につながります・シトウレイさん<前編>

第27回目は、ストリート・スタイル・フォトグラファーでジャーナリストでもある、シトウレイさんにご登場いただきました。世界をまたにかけて活躍するシトウさんは、愛嬌たっぷりのチャーミングな笑顔が印象的ですが、お話を伺うとしっかりとご自身の意志を持った素敵な大人の女性でした。仕事もプライベートも自分の視点を持って、ポジティブに真摯に楽しむ姿がとても魅力的なシトウさんに、ストリートスナップをはじめたきっかけや現在のお仕事のこと、日々を楽しむコツなどを教えていただきました。

ファッションの楽しさをわかりやすく伝えていきたい

ー シトウさんがストリートスナップを撮りはじめたのは、どのようなきっかけからでしょうか?

シトウさん:

最初は、ハプニングみたいなものなんです(笑)。大学時代から卒業後もモデルのお仕事をしていたのですが、ある時『FRUiTS』や『TUNE』というストリートスナップ専門誌を作っている当時のボスに、「カメラマンやってよ」って声をかけられたんです。それまでカメラなんてやったこともないし、興味もなかったのですが、「はい、わかりました」と(笑)。それから専属のスナップフォトグラファーを3〜4年続けた後、独立して今に至ります。

ー 現在はスナップ撮影もしながら、テレビや雑誌など幅広く活躍されていますが、どのような活動が主になっていますか?

シトウさん:

スナップ撮影がベースになっていますが、最近はファッション専門学校やアパレル系企業で、セミナーや講演等、話す仕事が多くなりました。街やパリコレなどでスナップをコツコツと撮り続けていると、いま街で何が起こっているのか、時代の流れやファッションのトレンド、方向性など、なんとなく見えてくるものがあるんです。今まではそれを写真で見せることが多かったのですが、「わかりやすい、伝わりやすい、取り入れやすい」をモットーに、セミナーではもっと体系化して言語化して伝えています。

ー シトウさんが、ファッションに興味を持ったのはいつ頃ですか?きっかけはありますか?

シトウさん:

学生時代から興味はあったのですが、のめり込んだのは、ストリートスナップの撮影を始めてからなんです。東京の街にはおしゃれな人が多くて、ロングスカートをワンピースにしたり、ワンピースをストールにしたりと、みんなファッションを自由に楽しんでいて。考えたら洋服も1つの生地なのだから、着方にルールなんてないんですよね。以前は、この色とこの色は合わない、これとこれは組み合わせちゃだめ、と「正解」か「不正解」でファッションを見ていたところがありました。でもスナップ撮影で出会う人たちの意外な組み合わせや着こなし方を見て真似するうちに、自分でも新しい発見があってどんどん楽しくなったんです。

ファッションの本質は、「何を着るかではなく、どう着るか」

ー ファッションにおいて、大切に考えていることはどのようなことでしょうか?

シトウさん:

「何を着るかではなく、どう着るか」。ファッションの本質ってそこかなと思うんです。「何を着るか」が大事なら、一番おしゃれな人は一番お金を持っている人になってしまいますよね。でも「どう着るか」ってセンスだから、それを磨けば一歩先んじられるはず。コスメも、ただなんとなく使うと、「大丈夫かな?この使い方は合っているのかな?」と不安になりますが、「“どう”使うか」を教えてもらうと、マインドも変わって、効果も実感しやすい気がします。「“どう”生きるか」も同じ。同じモノを見ても、楽しいと感じる人とそうでない人がいる。それなら楽しいと感じられる方がいいし、“楽しい”が多い方が、人生は豊かですよね!

ー ファッションは意外にも、生き方にも通じているのですね。

シトウさん:

そうなんです。ファッションを極めると、自分が下した決断に対して責任が持てるようになるのかなと思います。それとこれどっちにする?って、毎朝服を着るたびに決断事項がたくさんあるんです。例えば筋トレも、小さな負荷から始めるとだんだん大きな負荷もいけるようになるのと同じで、毎日の洋服選びなど小さな決断から始めると、人生の大きな決断もできるようになるのかなって。決断ができるマインドを育ててくれたのがファッション。だから私はファッションが好きなんです。あとファッションのいいところは、今日の服変だったなと思ってもやり直せる。昨日友達が着た服ってそんなに覚えてないじゃないですか。だから少しくらい変だったとしても、すぐみんな風化して忘れちゃうから大丈夫(笑)。

「成功の反対は、経験」。失敗の経験があるからこそ、成功につながる

ー 決断力の鍛え方を筋トレに例えるのはおもしろいですね! シトウさんはお仕事などで凹んだり不安になることはありますか?

シトウさん:

凹んだり不安に感じたりすることもありますよ。でも自分の力ではどうにもならないこともありますよね。例えば、仕事でプレゼンをする場合も最終的にはクライアントや制作の意向やプロジェクトとの相性次第。だからこそ、自分の中では後悔しないよう全力を出したら、あとは運を天に任せます。セミナーでも毎回緊張するので、自宅で予行練習をします。自信がないと不安になるし、準備不足で自信が持てないとしたら、その準備をきっちりやればいいだけ。不安なことがあったら、それを潰せるだけの準備はしっかりとしてから臨みます。

ー なるほど。理にかなった解消法ですね。シトウさんの軸になっている考え方などはありますか?

シトウさん:

ある人に「成功の反対は失敗ではなく、経験」と言われたことがあるんです。失敗してもそれは何かの発見になるし、経験になる。その経験があるからこそ次の成功につながるし、次はこうしないでおこうっていう経験則にもなるから、「成功の反対は、経験」。そう思うとなんでもチャレンジできるよと言われて以来、この言葉を心に留めています。不安の消し方もそうですが、仕事でもプライベートでも、やらないことって一番後悔するし引きずりますよね。できるだけその後悔がないように日々心がけています。

香りも本も映画も、ファッションと同じく型にはまらず楽しみます

ー 「やればよかった」という後悔よりも、やってみて経験になった方がいいですね。忙しい毎日だと思いますが、どのように気分転換されていますか?

シトウさん:

最近ワークアウトをはじめたのでそれも気持ちのリフレッシュにつながっています。またフットネイルをするのも気分転換の一つ。左右違う色を塗るなど遊ぶのが好きです。あとは本をたくさん読みますが、これが一番の気分転換ですね。本はいつも持ち歩いていて、多い時は1日2冊読むこともあるんです。

ー ご自身のインスタグラムでもご紹介されていますよね。どんなジャンルがお好きなのですか?

シトウさん:

本当は日本近代文学が専門なんですが、読むジャンルはあえてこだわらないようにしています。ここ2~3年は映画も観るようにしていて。同じで食わず嫌いにならないよう、幅広いジャンルから選びます。ちょっと間違っちゃった!って思うこともありますが、「こんなにおもしろくない映画は初めて!」とおもしろくなさすぎて逆にネタになることも!それも新しい発見ですよね(笑)。それがあると、自分の好みもはっきりわかるし、なんでも“発見”することが好き。トライしないことは、一番人生の幅を狭めてしまう残念なことだと思っています。だから人に迷惑をかけたり親を泣かせたりする以外はなんでもすると決めています(笑)。

ー 香りもお好きだと伺いましたが、どんな風に楽しんでいらっしゃいますか?

シトウさん:

日々の香水を選ぶのも楽しみの一つです。最近発見したのが、香りの重ねづけ。とある香水ブランドの店頭で、店員さんが甘い香りにミントの香りを少し重ねるとスッキリした香りになるって教えてくれたんです。実際に重ねてみると、意外にも喧嘩せずに中和して、香りの表情が変わりました。

ー おもしろいですね! ドゥーオーガニックの製品にもゼラニウムをベースに、ほんの少しだけミントを配合している商品があります。ほんの少しだけど、それだけで香りの印象がガラッと変わるんです。

シトウさん:

そうなんですね! ドゥーオーガニック製品の香りはどれも優しくて心地よい香りですよね。今日はどれとどれを合わせようかなって考えるのも、最近の楽しみ。昔好きだったけど気分じゃなくなった香水も、重ねることで新しい香りとして蘇らせることもできますよね。香水も、ファッションと同じく型にはまらないような楽しみ方ができるようになりました。

ー シトウさん流の香り選びのコツはありますか?

シトウさん:

例えば、カジュアルな格好の時はちょっと女っぽい香りにしてみようとか、女性らしいラインの洋服の時はあえて植物っぽい香りにしてみようとか、バランスをとるといいと思います。ファッションもそうだけど、ギャップがある方が奥行きが出るし、興味関心が湧きますよね。香りで意外性を持たせるのは好きです。

ー 香りとファッションの組み合わせも上手に楽しんでいらっしゃいますね。今後チャレンジしたいことなどはありますか?

シトウさん:

世界中で撮りためたストリートの写真のアーカイブが溜まっているので、それを一冊にまとめて写真集を作りたいなって思っています。それを通して、「何を着るかではなくどう着るか」というファッションの楽しみ方をもっと伝えていきたいなって思っています。あとは、香りが大好きなので、いつか香水も作ってみたいなと思っています。

Photos by:Yoshimi Kikuchi

シトウレイさん

シトウレイさん
日本を代表するストリート・スタイル・フォトグラファー、ジャーナリスト。毎シーズン、世界各国のコレクション取材を行い、独自の審美眼で綴られる言葉と写真が人気を博している。ファッションにおける感性の高さと分析力で講演や執筆、テレビやラジオ出演、商品プロデュースやコンサルタント等ジャンルを超えて活躍中。ストリートスタイルの随一の目利きであり、「東京スタイル」の案内人。また彼女自身のセンスもストリートフォトグラファーの権威「The Sartolialist」の著書で特集を組まれる等ファッション・インフルエンサーとしても活躍中。
STYLEfromTOKYO:reishito.com
著書:東京ストリート写真集「STYLEfromTOKYO」(discover21刊)http://amzn.to/prGJ2Z
東京ガイド「日々是東京百景」(文化出版局刊)http://amzn.to/GVwC5D
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