美容は日々の積み重ね。自分に手をかけて、年齢を重ねることを楽しみたい・吉川千明さん<前編>

第29回目にご登場いただくのは、美容家でオーガニックスペシャリストの吉川千明さん。吉川さんは、オーガニックコスメのPRオフィス「ビオ代官山」を主宰しながら、オーガニックコスメを扱うスパ・サロンや企業のコンサルタント、プロデュースに加えて、メディア出演やセミナーなど幅広い場面で、オーガニックビューティーを提案する活動をされています。いつもほがらかで素敵な笑顔の吉川さんに、オーガニックコスメとの出会いやポジティブに年齢を重ねるコツ、これからの暮らし方についてお話しいただきました。

植物の力で、肌がどんどん元気になるのを実感しました

ー 吉川さんが、初めてオーガニックコスメや植物の力に触れたきっかけを教えてください。

吉川さん:

出産のタイミングで起業してずっと好きだった美容の仕事を始めたのですが、知人の勧めで通い始めた、エステティシャンの国際ライセンスを取得するスクールで植物療法の授業があって。初めて自然の力で肌がきれいになるということを聞き、興味を持ったのがきっかけです。それから海外のオーガニックコスメブランドを知り、その志や製品の素晴らしさに魅了されました。

ー オーガニックコスメに出会う前はどうでしたか?

吉川さん:

実は、今とは真逆(笑)。20代の頃はブランドコスメがとにかく大好きで、かなりの数の化粧品を使いました。何でもとことんやり過ぎるタイプで、綺麗になりたくてありとあらゆる製品を試していたのですが、肌はきれいになるどころかどんどんボロボロに。皮膚科に通いステロイドを塗って、少しよくなってはまたあれもこれもと試して、また荒れてしまうの繰り返し。きれいになりたいと思ってたくさん使っていたものが結果肌をだめにしてしまったんです。

ー そんな時代があったのですね。それからどうオーガニックコスメにシフトされたのですか?

吉川さん:

やりすぎた結果、石油系成分の化粧品が合わない肌になってしまって。それからは無添加・無香料のもののみ。「香り」=合成香料だと思い込んでいて、香りがある化粧品を使うことが怖かったんです。ですから精油の香りがするオーガニックコスメも最初は半信半疑で、またかぶれてしまうんじゃないかと、使うのをためらっていました。ところが恐る恐るオーガニックコスメを使ってみると、肌が内側からどんどん元気になっていくのを実感して。その時の驚きは今でも覚えています。

ー まさに、植物の力を身をもって体験されたのですね。

吉川さん:

そうなんです。それまでは敏感な肌でも“使っても大丈夫かどうか”で選んでいましたが、オーガニックコスメは使うことで肌がどんどん元気になる、さらに香りという心地よさまで感じられる。「ああ、また美容を楽しんでいいんだ」と、新しい愉しみに出会ったような気分でした。また、オーガニックコスメは肌だけでなく環境にも優しい。その頃日本ではまだまだオーガニックコスメはあまり知られていませんでしたから、もっとたくさんの人に広めていきたいという想いで、2008年にオーガニックコスメのPRオフィス「ビオ代官山」を立ち上げました。

ー オーガニックコスメに出合って約25年が経ち、日々の中で大切に考えていることはありますか?

吉川さん:

世の中にはたくさんのモノが溢れていますが、本当にいいモノ、自分にとって心地よいモノだけに囲まれて暮らすってとても大事なことだなと感じています。モノがくれるパワーって大きいと思うんです。服でも小物でも食べるものでも、こだわりを持って丁寧に作られたものは、日々の中で自分自身を癒して支えてくれます。コスメも、作った人の想いや長い年月をかけて作ったストーリーがあって、大切に育てられた植物があって。そういうバックグラウンドがすごく大事。使うたびに、いいな〜と感じながら使うことも、日々の自分にとても力を与えてくれると実感しています。

まずは知ることから。そして、自分の意志で選択することが大切

ー 長年日本のオーガニック業界を見てきて、感じることはありますか?

吉川さん:

今では日本でも「オーガニック」という言葉が随分浸透してきていますが、その一方で情報が錯綜しているようにも感じます。もともとは、作物を育てる時に農薬をたくさん使って生態系が壊れて、このままだと地球環境が危ないからなんとかしなくては、という考えがオーガニックの始まり。つまり、オーガニックの原点は「土壌や地球を大事にしよう」ということ。自分ごとに置き換えて考えるとわかりやすい。例えば、自分の体が土壌だとすると、それを汚すものは選びたくはないですよね。これからはもっと、自分で見て、自分の意志で選ぶことが必要な時代ではないかなと思います。

ー そうですね。何を食べるか、何を身に着けるか、それがどういうモノなのか、海外の人は若い時から関心がある人が多い印象ですが、それに比べると日本人はそういった関心がある人が少ないと聞きます。

吉川さん:

食べるもの、着るもの、肌に塗るもの、自分の身を置く場所でも、自分の身のまわりにもっと関心を持つことが大切ですね。それを実践できるかどうかは、その人の環境や経済状況など事情があるかもしれないけど、食と同じで、若い時は健康のことなんて考えなくても、年齢を重ねたり、妊娠したり、体調を崩したりした時に気づくタイミングって誰にでもありますよね。そういう時に知識を持っておけば、思い出して選択することができる。わかった上で何を選ぶかは自由だけど、まずちゃんと知ること、関心を持てるといいですよね。

美容は日々の積み重ね。自分に手をかけて、年齢を重ねることを楽しみたい

ー 健やかでポジティブに年齢を重ねられている印象の吉川さん。年齢を重ねるということをどのように捉えていらっしゃいますか?

吉川さん:

私は年を重ねてからの方が断然楽しい。過去には戻りたくないし、今が一番いいと思っています。日本ではあまり年齢を言いたがらないけど、絶対昨日より今日の方が年とるんだからいいんじゃない、エイジングビーフみたいで(笑)。熟成された方がおいしいでしょう?年齢を重ねる=腐る、ではなくおいしく熟成していけるといいですよね。

ー 吉川さんが、年齢を重ねる上で意識していることはありますか?

吉川さん:

私は幼少期から両親に、いつでもほがらかで綺麗にしていなさいと言われて育ちました。女性も男性も綺麗でいることは、“いいこと”につながると思います。自分のお手入れをして磨くって重要。靴やバッグをお手入れせずに、ボロボロにしておくのはよくないでしょう?古くなるのは仕方のないこと。でもお手入れさえしてあげれば、長く使えるし味わいになります。だから肌や髪もお手入れをしてあげれば、年齢を重ねても綺麗に見えるんです。

ー 年齢を重ねれば重ねるほど、自分に手をかけることが大切になってきますね。改めて大切だと思う美容法はありますか?

吉川さん:

まわりまわって、洗顔って改めて大事だなと思っています。洗った後によく自分の肌を観察して、肌に合わせて洗うアイテムを選ぶことも大事。あとはしっかり水分補給。そして改めてオイルの良さも再確認しています。オイルは、塗るだけでなくメイク落としにも。目元の皮膚はデリケートだから、綿棒にオイルを含ませて優しくアイメイクをオフしています。ちょっと贅沢な使い方だけど、そういうひと手間がまつげを長持ちさせるし、目元のしわを増やさないコツです。画期的な美容法ではないけれど、結局美容って積み重ねなんだなと思うんです。毎日少しずつマッサージしてあげると気分までシャキっとするし、毎日丁寧にコツコツと、自分の肌を観察しながらケアを続けていきたいですね。

ー 今後の展望やチャレンジしたいことなどはありますか?

吉川さん:

これまで25年くらいはずっと仕事ばかりしていました。旅行などはしてきたけれど、日常を楽しめていなかったなと思っていて。映画を観たり、テレビでスポーツを観たり、韓流ドラマを観たりね(笑)。仕事だけで終わっちゃう人生はもったいないなって。青春を取り戻すというわけじゃないけど、そういう日常の何気ないことを楽しんでみたいなと思っているんです。特殊なことではなく目の前のことを楽しむ!今日の仕事をちゃんとする、スキンケアを毎日コツコツやる、幸せって今の時間を大事にすることで到達するものかなと。あと遊び心も大事にしたい。自分ではなかなか選ばないデザインのメガネを提案してくれるメガネ屋さんがあるんですが、今かけているのは最近のお気に入り。いくつになっても新しいことにトライする気持ちも持ち続けたいですね。

Photos by:Nobuki Kawaharazaki

吉川千明さん

吉川千明さん
(よしかわ・ちあき)
美容家・オーガニックスペシャリスト。オーガニックコスメのPRオフィス「ビオ代官山」・働く女性の保健室「さくら治療院」代表。「最上級のビューティは自然の力、植物の力が与えてくれる」という考えのもと、ビューティー、食、漢方、女性医療などナチュラルで美しいライフスタイルをさまざまな角度から提案。サロンやショップのプロデュースや、日本ではじめての女性専用漢方薬局を銀座に設立した経験を持ち、オーガニックビューティーの第一人者として、多岐に渡り活躍中。また15年続けている女性のためのセミナー「女性ホルモン塾」などを通して、女性特有のライフスタイルやこれからの暮らし方を発信している。https://biodaikanyama.com

PAGETOP