“今”を大切に生きていれば、過去をぬり替えていける・行方ひさこさん<前編>

第31回目は、ブランディングディレクターとして、ファッションや美容、食など幅広い業界で活躍する行方ひさこさんにお話を伺いました。美しく凛とした雰囲気と、好奇心旺盛でチャーミングな内面のギャップがとても魅力的な行方さんに、お仕事のことや軸になっている考え方、ライフスタイルについてお話しいただきました。たくさんの情報をフラットな目線で吸収しながら自分の意志を持って選び、アウトプットする姿勢、好きなことに真っすぐで“今”を大切に楽しむスタイルには、現代女性が日々を自分らしく生きるためのヒントが詰まっています。

モノ・コトの魅力を伝える仕事

ー 行方さんがブランディングディレクターとして活動するまでの経緯やどのようなお仕事か教えていただけますか?

行方さん:

映像制作会社やカメラマンのマネージメントを経験後、ストリートファッションブランドを友人と一緒に立ち上げて経営に携わっていました。ブランディングディレクターとして独立して15年が経ちます。企業やブランドの本当の魅力をみつけて、それをたくさんの人に伝えるお手伝いをすることがお仕事です。またブランディングの一環でプロモーションを企画することもあり、ブランドの本質や、その背景にあるストーリーを伝えるための企画やイベントをトータルで実行し、発信しています。最近では、自ら現地に赴き、取材・レポートをさせていただくことも増えました。

ー 魅力がきちんと届くように伝えるのは、とても難しいですよね。お仕事で大切にしていることはありますか?

行方さん:

例えば、生産者を訪れてその商品の魅力を伝えようとしても、企業やブランドからの一方的な発信だと、見る人もなかなか自分ごとにはならないのかなと。身近な人が行ってみてどうだったかというのを見て聞くことで、初めて関心を持てることも多いと思うんです。なので、人を巻き込んでなんぼ!と思っています。あとは、「三方良し」ということ。「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」を大切にするという近江商人の心得ですが、イベントでも何でも、関わるみんなが「良し」と思える関係性を作りたいですよね。

興味を持ったら、足を運んで自分の目で見るようにしています

ー 自分ごととして関心を持ってもらうことが大切ですね。よく地方を訪れている印象なのですが、地方のお仕事が多いのでしょうか?

行方さん:

半分はプライベートなんです。ここ数年、興味がある陶芸家さんや職人さん、生産者さんには、連絡をしたり紹介してもらったりして、直接会いに行っています。インスタグラムで繋がって、呼んでいただいたり、逆に私からご連絡して伺ったり。あとは都市部での展示会などに出向いて、在廊の時に作家の方と直接お話させていただくと、「よかったら来てください」と行ってくださることも多く、そういう時は遠慮なく行きます(笑)。

左/長崎県の波佐見焼の窯を訪れたとき。右/奈良県吉野郡で、吉野の植林見学。

左/埼玉県の農家で白菜縛り体験。右/沖縄県で、琉球藍染めの見学

ー 行方さんの、落ち着いたエレガントな雰囲気と、好奇心旺盛でアクティブな内面のギャップがとても魅力的です!最近はどのようなことに興味がありますか?

行方さん:

食に関することはずっと好きなのですが、最近は調味料に興味があって。食材にとてもこだわりのあるシェフの友人にいろいろと教えてもらった調味料を愛用しています。昔ながらの製法を続けている昆布屋さんや、お米から育てて作っているお酢屋さん、家族で営んでいるお醤油屋さんなど、ストーリーのあるブランドばかり。応援する意味もこめて、信頼できる作り手さんの製品を選ぶようにしています。自分が使っている調味料がどんな場所でどう作られているのか、実際に見てみたくて生産地に行っちゃうんですよね。

ー 素敵ですね。そんな風に生産地を訪れるようになったきっかけはありますか?

行方さん:

ファッションブランドをしていた時、実ははじめの頃はあまり工場に行っていなかったんです。めまぐるしい日々に追われてしまっていて。でも途中から工場へ行くようにしたら、「ちょっと違うから直して!」なんて、生意気なことが言えなくなりました。「工場」というと、人の手ではなく機械で作っている感覚になってしまうけれど、本当は何十人もの職人さんがラインになってミシンで縫ってくれているんです。その姿を見て、やっぱり現場を見るって大事なことだなと、身に沁みました。

ー 確かにそうですね。ドゥーオーガニックでも工場で生産をしますが、製品によってはすべて手作業で作られているものもあります。実際に目の当たりにすると、丁寧な技術と細やかさに頭が下がります。自分の目で見るのはとても大切ですよね。

行方さん:

だからこそ、今はいろいろな場所に足を運んでいます。実際に見ないとわからないこともたくさんありますし、直接お会いしないと聞けないこともたくさんあると思うんです。最初は図々しいかなと思いつつも、実際に伺うととても喜んでくださる方が多いんですよね。ご飯をご馳走になったり宿泊させてくださったりと、とても歓迎してくださいます。

みんなで1つのことについて考える“場”を作りたかったんです

ー ご自身のサイト「HINATA」を立ち上げたそうですが、どのようなサイトですか?

行方さん:

最初メディアを作りたかったのですが、メディアと名乗るには公平な目で物事を伝えていかないといけないだろうし、ライターが私一人ではダメだろうし。なので、個人メディアというかブログのような位置づけです。実は書くことにはすごく苦手意識はあったんですが、以前往復書簡コラムを書かせていただいていた時、意外と反響があって。コラムが終わってから、「もっと書きたい」という気持ちが高まっていて。

ー そこからサイトを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

行方さん:

日常の中で当たり前と思っていたことをもう一度見つめ直しながら、記事を通してみんなで1つのことを考える“場”を、自分で作りたいなと思ったことがきっかけです。中にはいまさら?という話題ももちろんあると思います。あえて知らないこともさらけ出す覚悟でいます(笑)。

すべての物事や情報をフラットな目線で見て、自分の意志で選ぶ

ー ご自身も読む人も、気づきの多い“場”になりそうですね。そのためにも日頃からインプットすることも大切だと思うのですが、意識されていることはありますか?

行方さん:

私は「いろいろなことを知りたい」「本当のことを知りたい」という気持ちが強いのですが、インプットする際はフラットな目線を大切にしています。若い子が言っているからとか自分が苦手と思っている人が言っているからとか、そういう偏りはなしにして分け隔てなく受け入れます。何でも決めつけてしまって、せっかくのいい情報を取りこぼすともったいないなと思うんです。読書が好きなので気になった本はジャンル関係なく全部買ってみますし、いろいろな業界の人と会って話します。美術館やギャラリーへ行ったり、作家さんを尋ねたりすることも、インプットですね。

ー 逆に、アウトプットする上で意識していることはありますか?

行方さん:

たくさんインプットした中で、アウトプットする時は必ず自分のジャッジを持つようにしています。例えば、ご飯を食べるお店を決める時もグルメサイトの点数も参考にはしますが、自分がどう感じたかという意志は持っておきたい。情報はフラットに広くインプットするけれど、選ぶ時は自分の感覚を信じるようにしています。

“今”を大切に生きていれば、過去はぬり替えていける

ー 日々を送る中で、大切にしている言葉や考え方はありますか?

行方さん:

「時間は未来から過去に流れている」。仏教のアビダルマ哲学にある言葉なのですが、15年くらい前に出会って以来大切にしている言葉です。時間は過去からずっとアップデートを繰り返して未来になっているというより、未来から過去に流れている。乱暴な言い方をすると「終わりよければすべてよし」なんですが、過去の失敗は何度でも挽回できる、塗り替えていけるということ。“今”を大切に生きていれば、オセロの目みたいに過去のことも全部ひっくり返すことができるんです。「あれがあったから今があるよね」と思えることもありますよね。

ー 過去の失敗に捉われず、新しいことに挑戦する勇気を持てそうですね。行方さんがこれから挑戦してみたいことはありますか?

行方さん:

これまで自分がいいなと思ったモノ・コトを、人とは違う視点で発信することを考えていきたいと思っています。文化は、日常生活に落とし込めていないと本当の文化とは言えないんじゃないかなと思っていて。アートはアートで面白いし好きだけど、リアルな生活の中に文化的なものをうまく落とし込むということをやってみたいですね。例えば、地方のいいもの、伝統工芸などの魅力に大人だけでなく子どもたちが触れられるワークショップだったり商品づくりだったり。各地の文化を、アートや日常生活とバランスよく掛け合わせて、作家さんやアーティストたちとうまく繋げていくお手伝いができるといいなと考えています。

Photos by:Nobuki Kawaharazaki

行方ひさこさん

行方ひさこさん
(なめかた・ひさこ)
ブランディングディレクター。アパレルや美容、食を中心に、ブランドの価値を高めるブランディングディレクターとして活躍する傍ら、女性誌やファッション誌、webメディアなどにも多数登場。私服コーディネートやライフスタイルなど、自然体で飾らない独自のスタイルは、幅広い層の女性から支持を得ている。日常で感じたことを自身の言葉で綴る「HINATA」にも注目したい。インスタグラム(@hisakonamekata)も人気。

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